振袖(想い出キモノ館)

中野羊子さんの想い出

成人式を控えた20歳のお正月、東京で生活していた私が実家に帰ると、ピンクの振袖がありました。我が家はきものを商うことを家業としておりましたので、その関係で京都で父が勝手に買ってきたのだということでした。私が知らない間に段取りが決まっていて、それを着て家族で写真を撮ることになっていたのです。私はピンクが嫌いだったのですが、渋々それを着て写真屋さんに行きました。

それから2年。私が22歳の秋に父が病気で急死し、東京に出ていた兄が家業を継ぐことになりました。父が亡くなって8年の間に私も2児の母になりました。

この振袖を見ると、わがままだったあの頃の私を思い出します。今回、振袖を出展するということで、母に立ち会ってもらい桐タンスを開けてみましたところ、この振袖以外にもピンクのきものがありました。父が私のために選んだきものがたくさんありました。それもしつけ糸のかかったまま。これらのきものを一枚づつ羽織り、慌しかった8年を母と振り返りました。

館長からのメッセージ

中野さんのご実家は、群馬県桐生市で伝統工芸の桐生お召しを制作するメーカー。お父様も羊子さんの振袖選びをきっと楽しみにされていたことでしょうね。そのお父様が羊子さんのために誂えた着物。10年の時を飛び越えて、お父様の想い出が蘇ったのではないでしょうか。キモノの持つ不思議な魅力です。

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