振袖(想い出キモノ館)

伊藤法子さんの想い出

この華やかな小紋は、私の娘達の七つのお祝い着でした。実は、もともと私のお嫁入り道具の一つ、訪問着だったのです。私が嫁いだ伊藤家は、台湾から引き揚げてきたご一家で、慎ましい暮らしを余儀なくされていました。昭和32年、忘れもしない六畳一間からスタートした私の結婚生活。その後も田舎で暮らす主人の両親への仕送りを欠かさず、私のものなど買う余裕はありませんでした。結婚から2年後、長女が誕生。その長女を頭に3人の女の子に恵まれました。女の子であれば七五三のお衣装は、無理をしてもと思うのが母親です。私もセーターの刺繍の内職をしてがんばりましたが、それでも新しいものを求めることはできませんでした。思いついたのが、私の嫁入り道具の訪問着。これを染め変えてやろうと。「いいや、自分のものがなくなっても!!」、そんな気持ちでした。この着物が、三人の娘の紐解きを祝ってくれました。

その後、歳月は流れ、伊藤家も昔の貧しさから立ち直っておりました。七つのお祝いに新しい衣装を作ってやることのできなかった娘達の成人。今度こそ、新しい振袖で祝ってあげることができました。三人の娘達それぞれに一枚ずつ、昔のように私が縫ってやりました。

私の訪問着を染め変えたお祝い着。そして、新しく誂えた振袖。この着物を見ると、私達夫婦の歩んできた道のりが走馬燈のように蘇ってくるのです。

館長からのメッセージ

いつも笑顔の伊藤先生にこんなご苦労があったとは!! 先生の強さの源がここにあったのですね。

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