振袖(想い出キモノ館)

尾関春美さんの想い出

私の娘、利恵の振袖です。今から8年前、成人を迎える彼女に、母として初めて支度することのできた着物です。それまでは、和裁の仕立て職をしている私の母が、すべて用意してくれていました。振袖だけは、私自身が選んでやりたかったのです。仕立ては、当時74歳の母に頼みましたが、できあがった振袖を前に母は、「一枚の絵を見るようだぞ」と、目を細めておりました。母の言う通り、見事に柄合わせされた振袖。今更ながら職人としての母の腕前に、感心したものでした。

成人から5年後、平成10年に結婚した娘。その婚礼の際にも、この振袖に袖を通してくれました。主人のさしかける傘。それが、花婿へと受け渡されます。思わず娘の振袖姿が涙でにじみました。

仕立ててくれた母に、孫の晴れ姿を見てもらえなかったことが、唯一の心残り。その母の七回忌を今年済ませ、この振袖で嫁いでいった娘には、二人目の孫を授かりました。娘の成長、孫の成長、そして私自身の歴史も刻んでいる、大切な大切な一枚です。

館長からのメッセージ

人一倍、ご家族思いの尾関さん。ひと針ひと針、着る方の幸せを願ってお仕事をされた、お母様譲りの愛情なのでしょうね。この次にこの振袖の出番がくるのは、いつのことでしょうか。そのときに尾関家は、どんなお喜びごとに沸くのでしょうか。楽しい空想を巡らせてくれる、想い出の振袖です。

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