この小紋は、もともと私が七歳の時に父親が誂えてくれたお祝い着でした。父の故郷は、福島県伊達郡川俣。「伊達の川俣養蚕どころ」が父の口癖。父は、その川俣から白生地を取り寄せ、そのころ住んでいた東京世田谷の染め屋さんで可愛い柄に染めてくれました。大人になっても着られるように仕立ててくれていましたので、中学卒業の袴姿の時にも直して着ることができたのです。
結婚して、ふたりの娘に恵まれました。次女の七歳のお祝いの時に、思いきって自分用に染め変えることに。それが、家族写真に写ったこの小紋です。自分の家を持ちたいという当時の願望が、家の描かれたこの柄を選ばせたのでしょう。
戦後、疎開先から叔母を頼って千葉へ戻りましたが、井戸の水をもらうにも気兼ねするような生活でした。自分の家を持ちたいという強い願望は、その時の経験から芽生えたのだと思います。染め変えた時のままの美しい色柄が、当時の記憶を色鮮やかによみがえらせてくれます。
私の七五三から59年、私と一緒にいてくれたこの着物。その着物をこうして皆様にお披露目できたこと、亡き父もほほえんでくれていると思います。私の着物好きもきっと父から受け継いだものでしょう。それをまた娘達が受け継いでくれることを祈っています。今になって父に感謝しています。有りがとう。


































