留袖・色留袖(想い出キモノ館)

高橋峰子さんの想い出

この小紋は、小学校の時に自分で織った白生地を染めたものです。私の実家は、奈良県宇陀郡御杖村。神武伝説の残る山村の大きな農家です。物心付いたときから、母を手伝って家業の養蚕や、機織りの手伝いをさせられたものです。桑の葉を摘むのは、学校に行く前の仕事。糸取りなどもさせられました。そんな環境で、母に習いながら織った想い出の着物です。その母も、昨年、98歳の天寿を全うしました。大阪から山村の農家に嫁いできた母は、苦労も多かったことと思います。どのようにして機織りなどを覚えたかわかりませんが、仕事には厳しい母でした。

江戸褄は、私の嫁入りの衣裳です。昭和30年、23歳の時です。同じ村内に嫁いだのですが、軽トラックの荷台に載っての嫁入りでした。車に乗ったのは、その時が初めて。揺れる車から落ちないように、荷台の縁にしがみついていたのを覚えています。今のような結婚式などない時代でした。江戸褄は、その後、何人かの嫁入りに貸してあげました。比翼はその時に付けたものです。多くのお祝いの場に立ち会い、今では、タンスの中で永い眠りについています。

館長からのメッセージ

江戸褄は、現代の黒留袖と違い、「おひきずり」で着ることを前提に柄が付けられています。上前と下前に左右対称に柄が描かれているのは、その為です。慎ましい生活の中にも華やか衣裳で花を添える。縁組みという特別な日の凛とした空気を感じるようです。ある時からこの江戸褄は姿を消し、上前から下前へと流れるように柄付けされた黒留袖が主流になっていきました。

「留袖・色留袖」のお名前インデックスに戻る

ページの先頭へ戻る