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本場結城紬「工房思川桜」

茨城県工業技術センター繊維工業指導所では、毎年「結城紬後継者育成研修」を実施しています。年間4名の研修生を受け入れ、下ごしらえから製織まで結城紬の技、そして心を伝承しているのです。

かつては徒弟制度の中で伝えられた伝統工芸ですが、今ではこうした新しい試みが各地で行われつつあります。機屋さんも全くの新人を採用するよりはリスクが小さく、この世界に入ろうとする人にも一から現場でという厳しさからワンクッションおくことができます。

栃木県小山市の「工房思川桜」にもこの制度を利用してこの世界に入った若者が一人。すでに7年目を迎え、工房にとってなくてはならない存在に成長されています。茨城県日立市出身で、県内に伝わる結城紬に触れ、これを守る仕事に従事したいと一念発起したそうです。

そして、この「結城紬後継者育成研修」終了後、工房思川桜の一員になりました。今でも日立から片道2時間をかけて工房に通っている彼女。その生き生きした表情からは、伝統工芸の継承という重苦しいムードは感じられません。

本来農家の副業として織られてきた結城紬。糸つむぎや、絣くくり、製織などが家庭内で分業され生産されてきました。新しい価値観が生まれる中、これでは後継者の育成が難しくなっています。そこで、糸染めを含めたすべての工程を一カ所に集めた工房を作り、継承できる事業にすることを目指して作られたのが、「工房思川桜」です。

社長さんは結城の産地問屋に生まれ事業を継いだ井上和也氏。私たち武蔵屋では、過去10年あまりにわたってこの井上さんの製品をご紹介してきました。井上さんが本業の産地問屋のかたわら、この工房を建てたのは平成16年。これからも、この新しい取り組みを応援していきたいと思っております。

工房では様々な作品が生まれています。写真は、重要無形文化財に指定されている「手つむぎ」「絣くくり」「地機織り」の技術により織られた作品と、本来、撚りをかけない「手つむぎ糸」にさらに撚りをかけた結城縮(ゆうきちぢみ)。

文化財の指定に染めの要件がなかったことから急速に化学染料化が進んだ結城紬。工房思川桜では、藍染めや草木染めなど、従来からの染め技法にも積極的に取り組んでいます。

写真は、当地の名物「思川桜」を染材に利用した作品。この桜は工房の名前の由来にもなっています。また、横糸に木綿を織り込んだ「もめんちぢみ」。様々なニーズに応えるラインナップをそろえられることも、工房という従来の結城産地になかった新しい形態が可能にしているのです。