【注意喚起】大切な着物や帯の保管について
梅雨時になると「桐ダンス」や「桐箱」などのお問合せが多くなります。雨の季節になると、大切な着物や帯の保管環境が気になってくるのでしょうね。
まずは、「桐の効能」について。桐はタンニンを多く含んでいて、それが防虫効果をもたらします。しかし、蒸散していくものなので、永久に防虫効果を持つものではありません。また多孔質の構造により、材の中に湿気を閉じ込めることができ、箪笥や箱の中の湿度を調整してくれます。しかし、これも桐材の表面積に見合った量しか効果は期待できません。この二点のことから、「桐」であればまったく安心という「桐信仰」は残念ながら幻想とお考えいただきたいと思います。ただ、気温差による伸び縮みが少ないため、密閉性を高く箪笥などを制作できることは、事実です。
以上のことから、桐箪笥や桐箱といえども必要に応じて「防虫剤」や「調湿剤(シリカゲル)」などを入れていただく必要があります。
防虫剤の種類
①ピレスロイド系製剤
主流のタイプ。比較的効果は高く、長持ちし、特有のにおいもなくほかの防虫剤と併用できます。
②パラジクロロべンゼン製剤
白色結晶・特有のにおい
即効性に優れています。
③ナフタリン製剤
白色結晶・特有のにおい
昇華スピードが遅いので長期保存向き。主に人形用として愛用されています。
④しょうのう製剤
白色結晶・特有の清涼感のあるにおい
昇華スピードは「パラジクロロべンゼン」と「ナフタリン」の中間。一番古い製剤で主に和服用として利用されています。
防虫剤の使用上の注意点
○成分を確認して購入していますか?
○使用上の注意を読んでいますか?
○寝室や子ども部屋など長時間過ごす部屋での使用は中止を検討しましょう。
○ウォークインクロゼットはすき間が多いため、部屋全体が高濃度になります。
○換気を心掛け室内濃度が高くならないようにしましょう。
用法用量を守らずに使用したことが原因のシックハウス症候群や健康被害が報告されていて、東京都ではHPを通じて注意喚起を図っています。詳しくは、下のリンク先でご覧ください。
パラジクロロベンゼンとはどんな物質ですか [東京都福祉保健局HP]
また、複数の種類の防虫剤を使用することによる危険性もあります。
詳しくは、下のリンク先のHPもご参照ください。
防虫剤の上手な使い方 [DCM株式会社HP]
タンスの中の湿度を調整するための調湿剤(シリカゲル)をお求めになる際も、シリカゲル以外に防虫のための薬剤が含まれていないかどうか、パッケージに表示されている内容物の表示を必ずご確認ください。
調湿剤「シリカゲル」について
シリカゲルにはA型とB型の2種類があり、吸湿性が異なります。比較的低湿度から吸湿を始めるA型に対し、B型の吸湿は高湿度型といえます。また、B型シリカゲルは常温でも放湿するため、一定の湿度に調整する能力があり、天日に干して再利用することもできます。A型は食品に、B型は着物などの衣類や絵画や掛け軸、人形など一般生活用品に使用します。
多孔質の構造で湿気を閉じ込めることができます。また、製造時に孔の大きさを調整することができますので、目的に応じた製品を作ることができます。きもの用には「きもの用・衣類用」のものをお使いください。湿度が50%になるよう設計された製品です。一般的に大きな和箪笥ひと棹に1000g程が適量と言われています。タンス用の製品は、シート状になったものが多く、カットすることもできますので、独立した引き出しなどにはカットしてお使いください。
きもの保存袋について
長期保存になりがちな礼装、振袖や七五三などの年齢儀礼の衣裳などには、「きもの用保存袋」なども発売されています。空気を遮断し、外装で紫外線をカット、内装には銀イオンを施しカビの胞子やムシなどを撃退する優れもの。賢く使用していただければ、あなたの着物コレクションを守ってくれます。こちらもシリカゲルとの併用がお勧めです。
着物や帯の保管について まとめ
住環境が向上し気密性が高くなっているところから、室内の温度と湿度が非常に高くなっています。人には快適になりましたが、着物の保管には厳しい環境。従来の「桐タンスに入れておけば安心」という神話が崩れているのです。着物の保管用に作られた桐タンスは、それ自体優れた工芸品でもあります。現代生活に合わせて、防虫剤や調湿剤(シリカゲル)の使用をお勧めいたします。ただ、タンスの中に絹製品しか入れていない場合は、防虫剤を使用する必要はありません。できれば、着物の保管は絹製品のみにしていただき、ウール(着物だけでなく紐も)、綿、洗って外に干すようなタオルや下着類などと保管するタンスを分けていただくことが賢明です。また、防虫剤の使いすぎからくる健康被害も報告されています。
また、密閉性よりも出し入れのしやすさを重視した桐タンスも制作されています。浅引き出しタイプのものがそれです。着物2~3枚ほどをひとつの引き出しに収納し、着用の際の出し入れがとても楽です。季節の変わり目に引き出しを空けて空気を入れ換えることも容易です。コレクションの量に応じて、5段、10段、15段と様々なタイプがあります。
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