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天然灰汁発酵建て藍染

桂川の清流が目の前に広がる景勝に天然灰汁発酵建 (てんねんあくはっこうだて)藍染工房「こんや」さんがあります。 一日に何トンもの水を必要とする藍染。その水には、この桂川の 豊かな伏流水が用いられているのです。

徳島県吉野川流域が藍の産地。秋、毎年ように反乱を繰り返す 吉野川は、稲作には不向き。そのため、洪水の前に収穫できる 藍作が、江戸時代に阿波藩を治めた蜂須賀公によって奨励 されたのです。

この藍の葉を発酵させて作られるのが「すくも」と呼ばれる藍染の 染料です。「青は、藍より出でて藍より青し」は、中国の「荀子 (じゅんし)」の言葉ですが、藍の葉から作られる「すくも」によって 濃い青色、紺色が生まれます。

ジャパンブルーと呼ばれ、かの小泉八雲、ラフカディオハーンにして 日本はどこを見ても青色をしていると言わせた藍染。その染料である 「すくも」の生産も、現在では年間でたった1200俵あまりとなって しまいました。

藍染に欠かせないものに灰があります。染料の「すくも」に灰を溶いた 灰汁(あく)を加え、発酵させて染液を作るのです。この染液を作ることを 「藍建て(あいだて)」と呼びます。

灰汁はアルカリ性で、適度なPh値を生むために木材の種類も 決められているのです。これが、「天然灰汁発酵建(てんねんあく はっこうだて)」と呼ばれる古来からの藍染技法なのです。

染液の発酵を助けるために、なんと日本酒を加えます。 重労働の「すくも作り」や「藍染め」の職人さんが仕事のあとに 飲む日本酒を染料にも与えたのが始まりだそうです。

13mもある着物地をこの天然染料で均等に染めるのは、至難の業。 ここ「こんや」では、大きなステンレスの染液槽の中にある左右2本の棒に 反物を交互に巻き取るようにしながらで、染め付けをおこなっていました。

藍の色素「インヂゴ」は、空気に触れ酸化することで青色になります。 「こんや」さんでは、染液槽の反物がベルトコンベアで水洗槽に移されます。 一定のスピードで酸化が進むため、均質な染色が可能になったのです。

水洗槽の水にも空気が含まれているので、水洗をしながらも青色の 発色が進みます。染液槽を出たばかりの緑色をした生地が青く変化して いくのがおわかりになりますでしょうか?

染液に浸け藍を含ませて引き上げ、 空気に触れさせて発色させる、 この作業を希望に色になるまで繰り返します。藍に一度浸けたときの色は 「かめのぞき」、次に「みずあさぎ」、「あさぎ」、「そらいろ」、「花いろ」 、 「なんど」と色が濃くなっていきます。

「こんや」さんでは、不可能とされていたムラのない藍の無地染や大島地への 染色を可能にするため、従来の藍染工房にはなかった設備と技法を 用いています。藍瓶はステンレスの水槽になり、反物を木枠の針にかけ 染液に浸けていた染色方法も、水槽に渡した棒の間を泳がす方法に変わりました 。 「こんや」さんの色に対するこだわりをそこここに感じる工房の風景です。

「こんや」さんの作品。ひとくちに藍と言ってもその色はさまざま。 柄ゆきも小紋から訪問着まで。ちりめん、大島、結城など幅広い素材に 染められています。

藍染への熱い思いを語ってくださった松本輝夫先生。
全国阿波藍染染織作家協会会員で株式会社「こんや」の 代表でもあります。